アメリカとイスラエルによるイラン攻撃によって、ハメネイ最高指導者が暗殺された。事態は沈静化するどころか、誰も予測できなかった制御不能のフェーズへと突入している。その鍵となるのが、現在のイランが取っている「モザイク防衛」と呼ばれる自律的な軍事システムだ。
■ 一網打尽を防ぐための「モザイク防衛」とは
今回の攻撃で、イランはハメネイ氏をはじめ、革命防衛隊のトップや国防大臣などの中枢幹部を一斉に失った。これを受け、イラン側は再び一網打尽にされることを恐れ、主要な人物が一箇所に集まって協議することを中止した。 中央での意思決定ができなくなった各軍事部隊は、あらかじめ与えられていた「非常事態にはこのように行動せよ」というマニュアルに従い、独自に立ち上がったのである。ウォールストリート・ジャーナルなどはこれを、分散型システムで自律的に行動する「モザイク防衛」と呼んでいる。各部隊がバラバラに(モザイク状に)動いているため、全体を停止させる手段が存在しない極めて危険な状態だ。
■ 外務省の「海峡解放」を軍が全否定する異常事態
この「トップ不在」の状況は、イラン政府内部に深刻な分裂を引き起こしている。 4月17日、イランの荒口外務大臣がSNSで「ホルムズ海峡は完全に解放された」と発信し、世界中に安堵が広がった。しかしその同日夜、実力組織である革命防衛隊が「海峡は依然として閉鎖されている」とこれを真っ向から否定し、翌18日には周辺の船舶に向けて実際に発砲・警告を行った。 外務大臣が国益を考えて「解放」を宣言しても、軍は「そんな話は聞いていない」「我々の判断で封鎖する」と独自に行動しているのだ。武力集団と外務省が対立した場合、武力を握る側が勝つという残酷な現実が浮き彫りになっている。
■ トランプ大統領の致命的な誤算
かつては、ハメネイ氏がトップとして君臨することで、外務省の対話路線に革命防衛隊などの強硬派を従わせる調整機能が働いていた。しかし、その「抑え役」が亡き今、全体の意思を統一することは不可能だ。後継者と目されるハメネイ氏の息子も、軍の強硬派を抑えつけるほどの権力基盤を持っていないと見られている。 トランプ大統領は「指導者を排除すればイランは屈する」と考えたのかもしれない。しかし結果として、交渉可能な相手を自らの手で消し去り、誰の指示も聞かない実力部隊を野に放つことになってしまった。この泥沼化する「モザイク防衛」こそが、戦争を長期化させ、日本の生命線であるホルムズ海峡を締め上げ続ける最大の要因となっている。

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